九州オルレ みやま・清水山コース 歴史と自然がたっぷり。気分は古都旅行
竹林、庭園、五百羅漢に三重の塔。九州に居ながらにして、まるで京都に来たかのような旅が楽しめるのが「みやま・清水山コース」です。大雨の影響でコースは一時休止中ですが、現在は復旧作業が急ピッチで進められています。春は桜、秋は紅葉と見どころもたっぷり。道中は、たくさんのお地蔵さまが見守ってくれます。
歴史と自然がたっぷりの「古都りっぷ」に出かけてみましょう。
コース情報
【行動時間】 約5時間
【高低差 】 150m
【距離 】 11.5㎞
【難易度】 中級〜上級
スタート地点からは八楽会のお城が見えます。
卑弥呼も見た?神宿る竹林
スタート地点は八楽会のお城が特徴的。みやま市役所商工観光課の井上さんと待ち合わせて一緒に歩き出します。みやま・清水山コースについて、道中に説明を受けました。
2021年8月の大雨で土砂崩れが起き、コースも大きな被害を受けました。二大スポットである女山史跡森林公園、清水山が立ち入り禁止となり、2022年3月末まで、コースも閉鎖を余儀なくされていました。
雰囲気のいい路地を通って女山史跡森林公園方面へ。
河童の二宮金次郎像。この石像を皮切りに、多くの石仏と出会うことに。
山に向かう緩やかな坂道で、石垣のようなものが見えてきました。古代山城である「女山神籠石」の一部です。かつては邪馬台国の卑弥呼が居住したとの説もあったそうです。
神籠石を越えると、まもなく「神宿る竹林」に至ります。神籠石、山内古墳群があることから、「神宿る」と名付けられたとのこと。心が洗われる見事な竹林です。卑弥呼も見たのでしょうか?
「この竹林も土砂災害の被害を受けました」と井上さん。被災した直後は、倒れた竹が道をふさぎ、木段も壊れ、大小の石が至る所に散らばっていました。
改修工事を終え、現在はすっかりキレイな状態に。道をふさいでいた石を路肩に積み、その横に水路をつくることで、雨が降っても影響を受けにくいつくりになりました。
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「ようやく、ここまでキレイになりました」と話す井上さん。木段は真新しさの出ない木材を使って改修。
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金属のボルトが出っ張っているのが新調した杭です。
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雨水の通り道を新設。
女山史跡森林公園の山頂部は、まだ閉鎖が続くため、迂回路からショートカットして下山する代替ルートがしばらく続きます。下山時のルートで、木段の工事現場が行われていました。手作業で一段ずつ作られている様子を目の当たりにすると、普段歩いている登山道へのありがたみが深まりました。
石像、地蔵がいっぱい
清水山までは、住宅地を通ります。家々の間に、鳥居と社。路傍には地蔵も目につきます。昔ながらの風景が今も生活の近くに残っているように感じられました。石造りの眼鏡橋を渡った先にも、地蔵がずらり。前掛けの赤色が鮮やかで、地域の人たちに大切にされているのが分かります。
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清水寺に向かう参道にある眼鏡橋。架橋から150年以上の時を経ています。
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眼鏡橋の奥に並んでいる地蔵。
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石畳の道を上がっていきます。
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あちこちで地蔵。
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おめかししているようです。
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左から水音がするので見てみると、小さな滝がありました。
清らかな流れの渓流と苔むした山肌に目が釘付けに。遠目だと岩だと思っていたものが、近づくにつれ、全部石像なんだ!と気付きました。釈迦の弟子である修行僧の群像が並ぶ「五百羅漢」です。明治時代に入って以降、首を落とされたのですが、近年になって再び顔を取り付けられたそうです。信仰の厚い地域なのが分かるエピソードです。
石像を見ながら奥に進んでいくと仁王門があります。
本来のルートならば、五百羅漢の奥にある仁王門、清水寺楼門、本堂、三重塔を経由して行くのですが、三重塔の付近で地盤にひび割れが生じているため、コースとしては仁王門の手前から迂回していくことになります。本堂まで行って引き返すことは可能です。
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楼門の手前は長い石段。
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ここにも土砂崩れの爪痕が残っていました。
「よかよか」老舗の名物女将
後半に差し掛かったところで、ちょっと一休み。清水寺の近くに店を構える「TAKeyA」に立ち寄りました。
「こんにちは、お茶でもあがっていってください」と女将さんが声をかけてくれました。
聞くと、多くの参拝者、登山者が訪れている老舗でした。100年以上続いているとのことで、「母がやって、父がやって、私がやるようになってから65年は経ちますね」という老舗です。
注文して待っている間に、女将さんから「2階に上がるとよかですね。景色がよかです」と促されて2階へ。座敷の広間から筑紫平野が見下ろせました。
眺望がよかったとお礼を言うと、「ああ、よかよか。紅葉の時もよかよ」と嬉しそう。テンポよく「よかよか」と連呼されると、楽しくなります。心地よい時間をつくってくれる名物女将の技です。
注文していたうどんが出てきました。竹の器に山菜やタケノコがふんだんに使われています。味はもちろん「よか」でした。
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竹の器に入ったうどん。
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ほどよくコシがあり、ホッとする優しい味でした。
迂回路から回り込んで三重塔にも行けます。
本堂に向かう道の地盤にひび割れがあります。
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春は三重塔と満開の桜のコラボレーションが楽しめます。
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展望所からも筑紫平野が眺められます。
隠れ家カフェで締め
清水寺から下りた後は、田園風景に包まれながら、フィニッシュの道の駅みやまを目指します。
3月から5月にかけては麦が実っていく様子、それ以降は水田、秋には首を垂れる稲穂を見ることができます。
フィニッシュ後は、コースを歩いている時に教えてもらった木立の奥にある「カフェむさしの」で、疲れを癒やしてきました。道の駅みやまから車で南に7分ほど走ったところにある隠れ家的なカフェです。
地元の方が言うには「せっかく来てくれたんだから、行ってほしいけど、あまり知られてほしくない場所」という名店。独自にブレンドしたコーヒー、曲げわっぱランチなどが味わえます。
大きな窓の向こうには、雑木林とその奥に広がる田園風景。静かなひとときを過ごし、古刹や歴史ある参道、自然をたどってきた余韻に浸って「古都」の旅を終えるのでした。
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おしゃれな店内。
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おいしいコーヒー。そっと添えられているのはミモザの花。
これから(春)の見どころ
【清水公園第一、第二展望所】
古くから市民の憩いの場所です。桜の季節にはあたりが薄紅色に染まり、散り際の花吹雪は心を締めつけます。
【女山史跡森林公園・展望台】
みやま市街を一望でき、天気の良い日には有明海、島原半島まで望めます。 桜の花に手が届きそうです。
【清水寺本坊庭園】
室町時代の画僧・雪舟が中国で学んだ山水画の技法を生かして築いたといわれています。愛宕山を借景として取り入れており、心字池を中心に庭石の配置・植え込み・池にそそぐ緩と急の滝など、自然と人工の美が見事に調和した庭園です。
スポット情報
【神宿る竹林】
スタートしてまもなくの地点にあります。意気揚々と坂を上ったら、意外と急でいきなり疲れた...と思って立ち止まり、ふと見上げると、神々しい景色が広がります。 邪馬台国の女王・卑弥呼が歩いたかも知れない!?
【女山史跡森林公園・展望台】
神宿る竹林を抜けて、緩やかな山道を上り終えた先にある展望台です。 有明海を一望することができ、眼下にはみやま市街、遠くには脊振山などを見ることができます。 春は桜、秋には紅葉が美しく、四季折々の景色を楽しむことができます。
【清水寺三重塔】
1836年、大阪の四天王寺の五重塔を手本に、14年の歳月をかけて完成しました。 清水山の自然と調和し、清水寺のシンボルとして親しまれています。
立ち寄りスポット情報
■カフェむさしの
住所:みやま市高田町海津345(Google Map)
電話番号:080-6455-3139
フィニッシュ地点から車で7分 田園の中にぽつんと佇む、雑木に囲まれたカフェ。 曲げわっぱランチがオススメ。
■こが茶カフェ
住所:みやま市瀬高町下庄493-1(Google Map)
電話番号:0944-63-2333
https://kogacha-cafe.business.site/
フィニッシュ地点から車で6分 老舗の茶舗が開いたカフェ。八女抹茶炭酸ソーダでリフレッシュ。
■茶房みもざ
住所:みやま市瀬高町長田749-1(Google Map)
電話番号:090-5726-6466
https://place.line.me/businesses/275157414
フィニッシュ地点から車で10分 国道209沿いにある雰囲気のよい喫茶店。旬の素材を使った食事と甘味を楽しめます。
スタートまでのアクセス
■オルレのスタート「八楽会」までのアクセス方法
【博多発】
・JR博多駅-(九州新幹線 約25分)-筑後船小屋駅-(各停 約3分)-瀬高駅-(タクシー 約10分)-八楽会
・JR博多駅-(快速・普通 約60分)-瀬高駅-(タクシー 約10分)-八楽会
【佐賀発】
佐賀空港- (リムジンバス 約40分)-JR瀬高駅
※予約制でタクシーの初乗り運賃(700円)補助を行っています。
初乗り運賃補助区間は、瀬高駅から八楽会、フィニッシュの道の駅みやまから八楽会。
※みやま市のサイトで詳細をご確認ください。
【車の場合】
・鳥栖I.C-約25分-みやま・柳川I.C-約5分-八楽会
注意するポイント
■ルートの注意点
・スタート地点の八楽会には竹製の杖が用意されています。
・「神宿る竹林」から山内古墳群に向かう道は現在閉鎖中。Bルートを通ってAルートとの合流点を目指します。最新のルートなどは適宜みやま市の案内を確認しましょう。
・ルートでは迂回していますが、清水寺本堂から三重塔への道は、閉鎖はされていません。看板で注意喚起されている通り、通行は自己責任となります。
■行動時間
約5時間
■高低差
150m
■距離
11.5㎞
■難易度
中級~上級
服装・装備
・歩きやすいスニーカー
・20~30Lのリュック
・夏場は帽子や汗拭きタオル
・動きやすい服装、登山用でなくともスポーツウェアでOK
・簡易的なレインウェア、傘やカッパ
・みやま・清水山オルレのパンフレット
・飲み物。夏場は多めに持っていきましょう。途中で補給も可能。
あると歩くのが楽しくなる装備
■おやつや軽食
店が空いてなかったり、疲れた時に食べると元気が出ます。
■双眼鏡や虫眼鏡
持っていくと小さな発見があります。鳥や景観を眺めたり、植物を調べたり。
■現在位置の把握(GPSなど)
スマホアプリYAMAP。地図読みが苦手な人でも、現在地が分かるのでおすすめです。
オルレのマナー
1.民家の庭にみだりに入らない。
2.人や個人のものを撮影するときは同意をもらう。
3.ゴミは必ず持ち帰る。
4.道沿いの農作物を勝手に採らない。
5.道端に咲いている花や木の枝を採らない。
6.民家付近等で大声で叫んだり、騒いだりしない。
7.次に訪れる人のために、リボンを持ち帰らない。
8.道案内の看板にはさわらない。
9.未舗装の道は、決まった経路を通る。
10.風景を楽しみながらゆっくりと歩く。
11.車道を歩くときは、車に気をつけて歩く。
12.コースから外れた急傾斜地等での危険な行動は控える。
13.途中出会う旅行者や地元住民の方々と笑顔 で挨拶を交わす。
みやま・清水山コースお問合せ
みやま市商工観光課
0944-64-1523
みやま市観光協会
0944-63-3955
九州オルレみやま・清水山コースについて
テキスト・写真:若岡 拓也(IN THE FIELD)
ディレクション:村上 智一(IN THE FIELD)
公開日:2022年3月14日
最終更新日:2023年1月25日