九州オルレ 筑豊・香春コース 香春岳を見ながら、ぬくもりを感じる里山の道-1

九州オルレ 筑豊・香春コース 香春岳を見ながら、ぬくもりを感じる里山の道

山は昔から人間にさまざまな恵みを与えてくれます。必然的に、ふもとに暮らす人々とは密接なつながりが生まれました。筑豊・香春コースは、そんな里山と人の関わりを垣間見せてくれます。終始眺めることのできる香春岳は、その恩恵の象徴です。そのほか、きれいに整備された竹林や林道、展望台のちょっとしたオブジェ。
ちょっとしたところに、人の営みのぬくもり、優しさが感じられることでしょう。


コース情報

 

【行動時間】 約5時間
【高低差】  約260m
【距離】   11.5㎞
【難易度】  中級


山の中に青春の門

JR採銅所駅のレトロな駅舎が始まりの場所。このコース、列車好きにぴったりです。このコースのフィニッシュ地点は隣駅の香春駅なので、あらかじめ香春駅に車を停めてスタート地点の採銅所駅まで列車で移動すると便利です。 


コースを示すリボンに従って、段々畑を横目に見ながら山に近づいていきます。リボンが物陰に隠れて見つけにくいこともありますが、そんな時は最後に目印を見たところまで戻るか、あるいは分岐がないかを確認しながら進みます。

  • 採銅所駅の近くにあるトンネルもレンガ造りで趣深い。

  • ここでは、生い茂る葉がリボンを隠していました。木に結えられた青いリボンが風に揺られた際に発見。民家の横から林道に入っていきます。


まず、矢山の丘を目指します。舗装路から、すぐに登山道になり、どんどん登っていきます。きれいに整備されていて歩きやすいルートです。ちょっと放置するだけで荒れてしまう竹林も、青々としており、人の手が頻繁に入っていることが分かります。

竹林の道はとても静かで癒されます。
手入れされた竹林や杉林。里山の登山道を進みます。


沢の手前で、一カ所だけ倒木が横たわっていました。あえて置かれています。そう思ったのは、小さな看板が架けられていたからです。何やら文字が書かれていました。
「青春の門」いわずと知れた作家五木寛之さんの小説のタイトルです。

香春岳に関する描写があり、映画化された際には香春町も舞台になったという縁のある作品です。それにちなんだ看板なのでしょう。遊び心あふれる門を、身をかがめてくぐります。


ほかにも、オルレを歩く人のために、おもてなしが用意されていました。登りの途中にいいタイミングで設けられた竹のベンチ。ちょっとしたことかもしれませんが、嬉しくなります。

  • 竹を組んで作ったベンチで小休止。

  • 間違った道を進みすぎないように、木を置いて誘導してくれます。

  • 山頂部は急傾斜。ぬかるんでいる時はロープを頼りましょう。


コースの最高点となる矢山の丘に到着です。ここからは、3つの山頂からなる香春岳の中で最も標高の高い「三ノ岳」を拝むことができます。

「青春の門」では、香春岳は以下のように記されています。
「香春岳は異様な山である。けっして高い山ではないが、そのあたえる印象が異様なのだ」

異様な理由として、ふもとから急角度でそびえたつため、実際の標高以上に高いと感じるからだとしています。確かに平野部から見ても、こうして周囲の山から見ても、存在感のある山です。


  • 丘には「幸せの鐘」が下がっていました。鐘よりもハートマークの看板に目が行きがちです。

  • ラクダのこぶのように盛り上がっているのが三ノ岳。
    二ノ岳、一ノ岳と続きます。


下山の途中でも、きれいな竹林を通りかかりました。
竹が勢いよく伸びているので、思わず見上げてしまいます。
ほかの木々と違ってサイクルの早い竹林で、これだけキレイな状態を保ち続けるのは、本当に大変なことです。


下り終えたあたりには御長生の滝。
長寿のご利益があると言われています。水量が少ない時期でも涸れそうで涸れないところも長寿だからでしょうか。


橋やオブジェに感じるもてなし

山を下りてから通過する神間歩公園。「間歩」は坑道を意味しています。スタート地点の「採銅所駅」と呼応していて、かつて銅を採掘していたことが分かり、名称からこの地の歴史が偲ばれます。

神間歩公園のカンセは、菜の花に囲まれて華やかに。


  • 手作り感のある橋です。向こう側に何やら看板が。

  • オルレのために整備していただいた橋でした。Hondaさんのホスピタリティーに感謝です。

  • 野菜の収穫に使う台車だけが畑にポツンと残っていました。これも人の営みです。


神間歩公園を過ぎてからは、まちの中を歩く時間が増えます。考え事をしたり、会話で盛り上がりすぎたりしていると「あれ、最後に目印を見たのはいつだっけ?」と道に迷うことも。舗装路でも、ルートを間違えることはよくあります。

 


半分くらいの距離を歩いたところにあるのが見晴らし展望台。わりとあっさり登ることができました。
眺望がよいのはもちろんですが、切り株にカボチャのオブジェが飾られていました。思わず写真に撮ってしまいます。


  • 展望台の先にある引き戸。害獣よけに設置されています。

  • 引き戸の先は、迷いようのない道。


「道の駅 香春」。食事を取るもよし、軽食を買うもよしです。

炭鉱で栄えた筑豊にちなんだ「石炭ソフトクリーム」にチャレンジ。竹炭パウダーが練り込まれています。さっぱりしたチョコ味でした。


  • 道の駅の駐車場から、万葉公園を通って、ふくろう岩展望所へ。

  • しばらく階段が続きます。体力を使うので、疲れを感じている方は、事前に道の駅でしっかり休憩を。


ふくろう岩展望所から見た一ノ岳(写真右)。 採掘されて平らになっています。


楽しい矢印探し

筑豊・香春コース で目についたのが、オリジナリティーにあふれた目印です。リボン、矢印、馬の形をしたカンセ。この3種類のうち、矢印が置き方や素材などで変化に富んでいました。変わり種を見つけるのが楽しくなり、進むために目標を探すのか、探すために進むのかが分からなくなるほどでした。

  • 鹿の角にもリボンが。

  • 道路の片隅にある石とのコンビネーション。ラフな置き方も好きです。

  • ちょっと分かりづらいですが、畦道の真ん中にご注目を。

  • ほかではまず見ない埋め込み式です。発見して嬉しくなりました。

  • 家の前にブロックごと置いていただけるとは。よく見ると、下にブロックをかませて高さを出していることにも優しさが感じられました。


ユーモアあふれるカウンター

竹のベンチだったり、カボチャや変わり種の目印を見ていると、受け入れる側でも、オルレを楽しんでいるように見えます。そんなポジティブな姿勢が現れている場所がもうひとつありました。

通過した人の人数を測定する「オルレカウンター」です。パンフレットにも記載されているのですが、そこに行くと、屋外になぜか電子レンジがありました。もちろん、温めはできません。中に入っているのは、測定用のカウンターだけです。ユーモラスで意外性のある容器に一瞬戸惑いますが、疲れの出てくる終盤で、クスッとできて心が和みました。

もちろん、オルレカウンターが入っている電子レンジ でチンしても、食べものを温めることはできません。

  • オルレの横断幕にまず目が行きますが、その隣をご覧ください。

  • なんの変哲もないレンジがアウトドアになるだけで違和感たっぷりに。

  • 中から出てきた真っ黒なカウンターです。この色も石炭にちなんででしょうか?


終盤は香春町の歴史が感じられる区間です。元光願寺の大クスは樹齢850有余年とも言われる巨木。何度も発生した土砂災害をものともせずに現存しています。 1945年(昭和20年)の枕崎台風の際に地域を土砂崩れから守ってくれたという逸話もあるそうです。


宿場だった旧街道を歩き、向かった先は香春神社。1300年以上にわたり、現在の場所にある格式高い神社です。

  • 一ノ岳の神様が鎮座している香春神社。

  • 境内で存在感を発揮している山王石。一の岳から轟音とともに落下してきて、現在の位置に座ったそうです。現在はパワースポットとして定着しています。


頑強な鉄脚の上にあるのはベルトコンベア。一ノ岳で採掘した石灰石を運んでいます。


ゴール地点のJR香春駅に到着。列車に乗ってスタートのJR採銅所駅に戻ることもできます。

木々や草花、山などの自然、そこに暮らす人の歴史や文化に触れること。地域の魅力を間近に感じられるのがオルレの魅力です。香春コースはその中でも、地域の方々が身近に感じられました。「オルレカウンター」や「青春の門」のように、オルレの参加者に対する心遣いが心の距離を近づけてくれたのでしょう。オリジナリティーあるホスピタリティーに、また訪れたくなりました。


これから(春)の見どころ

■JR採銅所駅
駅構内や線路沿いに並ぶ桜がとてもきれいです。

■第二金辺川橋梁
高さが18メートルがゆえに地元では、通称「六十尺」の名で親しまれています。第築堤と鉄橋の取り合わせは鉄道写真の撮影スポットとして有名です。春は菜の花で彩られます。

■香春神社
奈良時代に編纂された風土記にも記されている古社です。鳥居から境内にかけて伸びる参道沿いの桜並木は圧巻です。


スポット情報

■矢山の丘 
本コース一番の標高を誇るスポットです。 頂上にある鐘を鳴らして幸せを呼び寄せましょう!

■柿畑
この場所からは、日田彦山線の列車を見ることができるため人気のスポットです。

■ふくろう岩展望所
名前のとおりふくろうの石像がお待ちしております。

■香春岳遠望
五木寛之「青春の門」の舞台となった香春岳がきれいに望めるスポットです。

■元光願寺の大クス
樹齢850有余年といわれるクスノキで、福岡県指定天然記念物となっています。パワースポットとしても有名です。

 


立ち寄りスポット情報

■珍竜軒
住所:福岡県田川郡香春町採銅所5343-1(Google Map
電話番号:0947-32-4700
コース沿いにあり、オルレ利用者も多く立ち寄るお店です。何度食べても飽きのこないラーメンは、さっぱりとんこつでやみつきになります。

■道の駅香春「わぎえの里」
住所:福岡県田川郡香春町鏡山1870(Google Map
電話番号:0947-32-8727
地元産の新鮮、安全な食材や商品を生産者が心を込めてお届けする拠点施設です。

■洋菓子のブッシュ
住所:福岡県田川郡香春町高野1019-13(Google Map
電話番号:0947-32-6990
フィニッシュのJR香春駅付近にある洋菓子のお店です。ケーキや焼き菓子をお土産にいかがでしょう。

 


スタートまでのアクセス

オルレのスタート「JR採銅所駅」までのアクセス方法

【博多発】
・JR博多駅-(快速 約70分)-JR西小倉駅-(徒歩 約1分)-日田彦山線乗り換え-(約40分)-JR採銅所駅

【車の場合】
・福岡IC-(高速道路 約40分)-小倉南IC-(一般道 約20分)-JR採銅所駅


注意するポイント

■ルートの注意点(2022年3月時点)
・見晴らし展望台の後にあるゲートは通過時にきちんと閉めましょう
・上高野観音寺の周辺はリボンがわかりづらいかもしれません。地図を見てルートを確認してください。
・ふくろう岩展望所から下ると、工事現場に至ります。目印が見つけにくいのですが、見つからずとも高架下をくぐればOKです。
■行動時間
約5時間
■高低差
260m
■距離
11.5㎞
■難易度
中級


服装・装備

・歩きやすいスニーカー
・20~30Lのリュック
・夏場は帽子や汗拭きタオル
・動きやすい服装、登山用でなくともスポーツウェアでOK
・簡易的なレインウェア、傘やカッパ
・筑豊・香春コースのパンフレット
・飲み物。夏場は多めに持って行く。途中で補給も可能。

 


あると歩くのが楽しくなる装備

■おやつや軽食
店が空いてなかったり、疲れた時に食べたりすると元気が出て、また歩きたくなります。
■双眼鏡や顕微鏡
持っていくと小さな発見があります。鳥や景観を眺めたり、植物を調べたり。
■現在位置の把握 GPSなど
スマホのアプリ「YAMAP」。地図読みが苦手な人は自分の現在地がわかるのでおすすめ。


オルレのマナー

1.民家の庭にみだりに入らない。
2.人や個人のものを撮影するときは同意をもらう。
3.ゴミは必ず持ち帰る。
4.道沿いの農作物を勝手に採らない。
5.道端に咲いている花や木の枝を採らない。
6.民家付近等で大声で叫んだり、騒いだりしない。
7.次に訪れる人のために、リボンを持ち帰らない。
8.道案内の看板にはさわらない。
9.未舗装の道は、決まった経路を通る。
10.風景を楽しみながらゆっくりと歩く。
11.車道を歩くときは、車に気をつけて歩く。
12.コースから外れた急傾斜地等での危険な行動は控える。
13.途中出会う旅行者や地元住民の方々と笑顔 で挨拶を交わす。

 


筑豊・香春コースお問合せ

香春町役場産業振興課 
0947-32-8406 

香春町観光協会
0947-85-8035

 


九州オルレ筑豊・香春コースについて

テキスト・写真:若岡 拓也(IN THE FIELD)
ディレクション:村上 智一(IN THE FIELD)
 


公開日:2022年3月11日
最終更新日:2023年1月25日

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