【世界文化遺産】 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群-1

【世界文化遺産】 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群

2017年7月9日、ユネスコ世界遺産委員会において、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界文化遺産へ登録となりました。
登録が決まったのは、宗像市の宗像大社沖津宮(沖ノ島と小屋島、 御門柱、 天狗岩)、宗像大社沖津宮遙拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮、福津市の新原 ・ 奴山古墳群の8資産。東アジアの交流を示す出土品の考古学的価値と、古代祭祀遺跡が残る沖ノ島と現在まで続く宗像三女神信仰の一体的な価値が高く評価されました。


今も脈々と受け継がれる宗像三女神信仰

【画像1枚目】17世紀の半ばまでに築かれたとされる沖ノ島の沖津宮社殿。沖ノ島の祭祀遺跡は社殿の背後に広がる巨岩群を中心に22か所が確認されています。

【画像2枚目】古代の宗像地域
田心姫神を祀る沖津宮(沖ノ島)、湍津姫神を祀る中津宮(大島)、市杵島姫神を祀る辺津宮(九州本土)は、ほぼ一直線上に並んでおり、海を隔てた先には朝鮮半島や中国大陸があります。また、辺津宮の西、かつての入海に面した台地には沖ノ島祭祀を行った古代の人々が眠る新原・奴山古墳群が位置します。

Column

宗像三女神の降臨について記された『日本書紀』神代巻。-1

宗像三女神の降臨について記された『日本書紀』神代巻。


文化的にも歴史的にも深く結びついた8つの資産

島全体が御神体とされ、今も宗像の人々の信仰を集める沖ノ島では、4世紀後半から9世紀にかけ、航海の安全と交流成就を祈る国家的な祭祀が行われてきました。島内22か所の祭祀遺跡からは、古代東アジアにおける交流を示す奉献品、約8万点が出土。すべてが国宝に指定されるなど、その内容や規模の大きさから「海の正倉院」とも呼ばれています。

島で約500年に渡って行われてきた大規模な祭祀の場は、巨岩の上(岩上祭祀)から巨岩の陰(岩陰祭祀)、巨岩の陰とその外側の地面(半岩陰・半露天祭祀)、平坦地(露天祭祀)へと4段階で推移しており、神道成立以前の日本固有の自然崇拝、古代祭祀の変遷を一か所で辿ることができる貴重な遺跡となっています。

宗像大社は沖ノ島の沖津宮、大島の中津宮、九州本土の辺津宮の三宮から成り、天照大神(あまてらすおおみかみ)が生んだ三人の女神「宗像三女神(さんじょしん)」が祀られています。沖ノ島と同じく、中津宮、辺津宮からも独特の奉献品が出土していることから、古来より三宮共通の祭祀があったと考えられています。また、福津市の新原・奴山古墳群は、沖ノ島の信仰を支え祭祀を司った豪族宗像氏の墓とされており、これら8つの遺産は文化的にも歴史的にも深く結びつき、切り離せないものとなっています。


構成資産

  • 沖ノ島と3つの岩礁(小屋島、御門柱、天狗岩)

    沖ノ島と3つの岩礁(小屋島、御門柱、天狗岩)

    宗像市の神湊から約60㎞の沖合に浮かぶ沖ノ島は、全島が沖津宮の境内となっています。沖ノ島の手前に並ぶ小屋島、御門柱、天狗岩の3つの岩礁は沖津宮の鳥居の役割をしており、岩礁に囲まれた海もまた沖津宮の神域とされます。

    ※原則入島禁止

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  • 宗像大社沖津宮

    宗像大社沖津宮

    標高約80mの島の中腹には、宗像三女神の長女、田心姫神を祀る沖津宮の社殿が巨岩群に守られるように鎮座しています。

    ※宗像大社神職以外は原則入島禁止

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  • 宗像大社沖津宮遙拝所

    宗像大社沖津宮遙拝所

    神職以外の渡島が禁止されている沖ノ島を遥拝する(遥か遠くから拝む)場所。大島の北岸の海辺に設けられており、天気のよい日には遙拝所からご神体である沖ノ島を望むこともできます。

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  • 宗像大社中津宮

    宗像大社中津宮

    大島に鎮座する中津宮には宗像三女神の次女神、湍津姫神が祀られています。本殿の裏手、御嶽山(みたけさん)の山頂では7~9世紀にかけて沖ノ島と共通する古代祭祀が行われていました。

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  • 宗像大社辺津宮

    宗像大社辺津宮

    宗像三宮の総社。宗像三女神の三女、市杵島姫神が祀られています。境内には辺津宮の起源となった古代祭祀の場「下高宮祭祀遺跡」の一部が「高宮祭場」として整備され、現在も神事が執り行われています。

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  • 新原・奴山古墳群

    新原・奴山古墳群

    5~6世紀に築かれた古墳群。対外交流に従事し、沖ノ島信仰の伝統を育んだ宗像氏の存在の証とされています。前方後円墳、円墳など40基程度が現存。古墳群東の眺望所からは大島、沖ノ島へと続く海が一望できます。

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伝統的な祭祀と篤い信仰禁忌で守られた神宿る島

沖ノ島では、古代祭祀が行われなくなった後も、対外交易を担った宗像大宮司家、さらに16世紀以降は神職や地域の人々により厳格な禁忌のもとで信仰が守られてきました。禁忌には沖ノ島で見たり聞いたりしたことは一切口外してはならない「不言様(おいわずさま)」、「島から一木一草一石とも持ち出してはならない」、「上陸前には海に浸かり体を清める禊をしなければならない」などがあり、現在まで受け継がれています。また、沖ノ島は宗像大社の新職以外は原則入島禁止です。このような厳格な禁忌により、沖ノ島の祭祀遺跡は1100年もの間手つかずのまま残され、今日まで守られてきたのです。

  • 沖ノ島では、現在も10日交代で宗像大社の神職1人が島に常駐し、神事を行っています。神職は毎朝、着衣をすべて脱いで海に浸かり心身を清める「禊」を行います。


御神体を望む沖ノ島遥拝

古来より、御神体である沖ノ島とその周辺海域は神域とされ、立ち入りが制限されてきました。そのため、宗像では「沖ノ島を遥拝(ようはい)(遥か遠くから拝む)する」という伝統が生まれました。大島の沖津宮遙拝所は沖ノ島を拝む拝殿の役割を持ち、現在も大島における重要な信仰の場となっています。
古より受け継がれてきた祈りの気持ちは今も常に宗像の人々の暮らしの中にあり、その信仰はこれからも大切に守り継がれていくことでしょう。
例年10月1日には「みあれ祭」も開催されます。ぜひ現地を訪れ、連綿と続く伝統的な祭や信仰に触れてみませんか。

  • 【1】沖ノ島から約48㎞の場所にある大島の沖津宮遙拝所。社殿に例えると沖ノ島は本殿、遙拝所は拝殿にあたります。寛永2年(1705年)の『筑陽記』に沖ノ島遥拝の記述があることから、18世紀頃にはこの場所に遙拝所があったと考えられています。

  • 【2】遙拝所からの眺め。空気の澄んだ日には水平線上に浮かぶ沖ノ島が見えます。

  • 【3】遙拝所入口に建つ寛延3年(1750年)銘の石碑


毎月1日と15日の「月次祭(つきなみさい)」には氏子である大島の漁師たちが中津宮に献魚を行います。宗像の人々の信仰は日常にあり、それは世界遺産に登録された今も変わりません。


  • 【5】みあれ祭に先んじて田心姫神の御分霊を中津宮にお迎えするために沖ノ島で行われる「神迎え神事」。

  • 【6】神迎え神事で沖ノ島からお迎えした田心姫神の御分霊は、みあれ祭まで大島の中津宮本殿内に仮奉安されます。

  • 【4】宗像大社秋季大祭の幕開けを飾る「みあれ祭」。沖津宮の田心姫神と中津宮の湍津姫神の御分霊を辺津宮にお迎えする神事。大島から神湊まで宗像七浦の漁船団数百隻が御分霊を載せた御座船(ござぶね)にお供えし、海上神幸(しんこう)します。毎年10月1日開催。


国宝8万点を収蔵する宗像大社「神宝館」


宗像大社辺津宮にある展示施設。銅鏡、装身具、武器、馬具、土器など、沖ノ島の祭祀遺跡から出土した約8万点の奉献品(すべて国宝)を収蔵・展示しています。また、宗像大宮司家伝来の古文書など資料も充実。
現在まで続く宗像三女神への篤い信仰、日本と東アジアの対外交渉史を時代の流れに沿って辿ることができます。


宗像大社「神宝館」

宗像市田島2331
開館時間/9:00~16:30(最終入館16:00)
休/年中無休
拝観料/一般800円、高・大生500円、小・中生400円 
TEL:0940-62-1311(宗像大社)


  • 【7】三角縁神獣鏡(岩上祭祀から出土)

  • 【8】金銅製龍頭1対(半岩陰・半露天祭祀から出土)

  • 【9】金製指輪(岩陰祭祀から出土)


世界遺産ガイダンス施設

大島交流館では、島の歴史や沖ノ島との繋がりなどを映像や展示で紹介。沖ノ島と同時期に大島で行われていた祭祀遺跡の遺物も展示しています。福津市複合文化センター(カメリアステージ)歴史資料館では、新原・奴山古墳群をCG映像や、模型、出土品等で解説。いずれも世界遺産を巡りながら気軽に立ち寄れる施設となっています。

  • 海の道むなかた館

    海の道むなかた館

    海の道むなかた館は、世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」のガイダンス施設とともに、宗像の歴史について学ぶ施設です。

    宗像市深田588
    開館時間/9:00~18:00
    休/月曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日~翌年1月3日)
    入館料/無料(特別展示等の場合は、有料となることがあります。)

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  • 福津市複合文化センター(カメリアステージ)歴史資料館

    福津市複合文化センター(カメリアステージ)歴史資料館

    新原・奴山古墳群を解説した展示室が設けられています。
    福津市津屋崎1-7-2
    開館時間/10:00~20:00
    休/火曜、毎月最終水曜、12月28日~1月4日
    入館料/無料
    TEL:0940-72-1207(図書・歴史資料館)

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  • 大島交流館

    大島交流館

    大島の人達の沖ノ島への思いや伝統文化をスクリーン映像で体験できるなど、世界遺産について楽しく学ぶことができます。
    宗像市大島901-4
    開館時間/10:00~16:00
    休/月曜(休日の場合は翌平日)、12月29日~1月3日、渡船が欠航の日
    入館料/無料
    TEL:0940-72-2797

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各遺産群へのアクセス

※大島島内の交通には西鉄バス「グランシマール」が便利です。大島ターミナル~砲台跡往復1日7便運行で片道300円(1日フリー乗車券700円)。その他、レンタサイクル、レンタカー、タクシー(1台)もあります。


【お問い合わせ】
宗像市観光協会 TEL:0940-62-3922 
ふくつ観光協会 TEL:0940-42-9988


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